最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1977 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
本件は、被告人Aが「拳銃一挺、同補助弾倉一個及び同革製サツク一個」を所持
しおり、被告人BがAから右拳銃等の「処分周旋」を依頼されてこれを受取り、こ
れをCなる者に引渡すまで所持していた、という事件であるが、被告人Bのための
弁護人大井静雄、滝沢斉の上告趣意書、同滝沢弁護人の上告趣意書および被告人A
のための弁護人岡田実、国井俊雄の上告趣意書は、末尾に添えた別紙記載の通りで
ある。
(一) 大井、滝沢両弁護人の論旨第一点は、原審公判廷において「被告人Aは
所持の事実は相違ないが売却方を依頼したことはなかつた旨、被告人Bは運んだ事
実は間違ないが其の拳銃を売却するつもりはなかつた旨、それぞれ陳述した」こと
を指摘し、原判決は拳銃の「処分周旋」の事実を認定しながらその意義を明かにせ
ず、理由不備の違法がある、と非難する。しかし銃砲等所持禁止令違反が成立する
ためには法定の除外事由なくして銃砲等を所持すれば足り、その動機を問わないの
である。原判決が「処分周旋」という言葉を用いたのは所持の動機を示したにとゞ
まり、それを犯罪要件としたものではないから、所持の事実が証明された以上、そ
の動機の証拠説明がなくても、理由不備と言い得ず、論旨は理由がない。
(二) 大井、滝沢両弁護人の論旨第二点は、原判決は、その事実の判示におい
て拳銃一挺、同補助弾倉一個および同革製サツク一個の所持を認定しているが、そ
の証拠としては拳銃の所持授受についての供述を挙げるのみで、弾倉およびサツク
につき判示に照応する供述が採られていない、と非難する。しかし、補助弾倉、革
製サツクの類は拳銃の附属品であつて、「拳銃」という言葉にこれら附属品をも含
めて供述したものと解されるのであるから、たとい証拠たる供述中に「拳銃」との
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みあるとしても、判示と食いちがうとは言えず、論旨は理由がない。
(三) 大井、滝沢両弁護人論旨第三点は、原判決は拳銃、補助弾倉、革製サツ
クの没収にあたり昭和二三年押第一八〇三号の一、二、三と表示したが、右番号に
対応する証拠物が存在しないから、異なれる拳銃について没収の言渡をしたもので
ある、と非難する。しかし、押収された拳銃等と没収を言渡された拳銃等とは同一
物であり、たゞ押収番号が第一審裁判所においては昭和二二年押第四五八五号であ
り、第二審裁判所において前記の番号になつたのであることが記録上認められるか
ら、原判決には何ら所論のごとき食いちがいなく、論旨は理由がない。
(四) 大井、滝沢両弁護人論旨第四点は、量刑不当の主張であつて、上告の適
法な理由にならない。
(五) 滝沢弁護人論旨第一点は、前記(三)と同一であつて、同じく理由がな
い。
(六) 滝沢弁護人論旨第二点は、原審には本件の拳銃、補助弾倉および革製サ
ツクについて証拠調をしていない違法がある、というのであるが、原審が証拠品全
部を示してその都度被告人に対し意見弁解の有無を問うたことは、記録(第三回公
判調書の記載)によつて明かであつて、論旨は理由がない。
(七) 滝沢弁護人論旨第三点は、所持と言い得んためには物の上に実力を加え
得ることと他人の干渉を排して事実上の処分をなし得る状態にあることとを必要と
するのであるから、原判決が被告人Bのわずか二時間の運搬の事実を所持なりとし
たのは、擬律錯誤の違法である、と主張する。しかし、銃砲等所持禁止令にいう所
持たるためには、事実上その物を支配し得べき状態にあれば足りるのであつて(昭
和二三年(れ)第三九七号、同年七月二九日最高裁判所大法廷判決参照)、被告人
Bがこの状態にあつたことは明かであるから、原判決には所論のような違法はなく、
論旨は理由がない。
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(八) 岡田、国井両弁護人論旨第一点は、検事は被告人Aが拳銃一挺を所持し
た事実につき公訴を提起したのであるのに、原判決が弾倉およびサツクについて有
罪を認定したのは、公訴のない事実について裁判したものである、と非難する。し
かし(三)に述べた通り、弾倉とサツクとは拳銃の附属品であるから、拳銃所持に
ついての起訴は附属品所持をも含み、原判決がその全部の所持につき断罪したのは
起訴されない事実について判決したのではなく、論旨は理由がない。
(九) 岡田、国井両弁護人論旨第二点は、弾倉およびサツクは銃砲等所持禁止
令の対象にならないものであるからその没収は違法だ、というのである。しかし、
(三)および(八)に述べた通り、これらが拳銃の附属品としてその所持を犯罪と
認定され現物を押収された以上、それが拳銃とゝもに没収されるのはむしろ当然で
あつて、論旨は理由がない。
(一〇) 岡田、国井両弁護人論旨第三点は、原審が情状に関する証人申請を却
下して情状を認定したのは証拠によらずして事実を認定したものである、と非難す
る。しかし、事実についてさえ証拠調の範囲は原審の裁量であるところ、殊に情状
について弁護人申請の証人を全部取調べなければならないものではなく、論旨は理
由がない。
よつて旧刑事訴訟法第四四六号に従い、主文の通り判決する。
以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
検察官 長谷川瀏関与
昭和二四年一一月一日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
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裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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